順天堂大学同窓会 研修会(シンポジウム)の開催について
「その時学校で何ができたのか~東日本大震災の事例を通して~」報告
平成23年12月3日(土)(14:30~17:00)東京千駄ヶ谷にある、日本青年館CR会議室において上記研究会(シンポジウム)を開催しました。
パネリストには、3月11日に起きた未曾有の東日本大震災時に、勤務する学校施設で地域住民や帰宅困難者を受け入れた、立教学院総務部副部長の新地章倫(しんちあきみち)氏、東京家政大学附属女子中学教頭 歳納繁太(としのうしげた)氏を迎えて、その時に遭遇された実体験を基に防災の取り組みについてお話いただきました。
新地氏は、震災当日、勤務先の立教大学池袋校舎において同大学の教職員学生はもとより、池袋駅周辺から押し寄せてくる帰宅困難者に避難場所として大学構内施設設備を開放する陣頭指揮にあたられたが、実際はJRや警察からは何の連絡もないまま、約3000人の一般市民が池袋駅からなだれ込んできたのが実情であったと当時を振り返られた。
大学が広域避難場所に指定されているとはいえ、これほどの人数が大学施設内に押し寄せてくることは想定外だったそうで、偶然にも東日本大震災の前に災害時の対策本部の机上訓練を行なっていたことが功を奏し、「備えあれば憂いなし」のことわざを実感したと語られたのが印象的でした。
歳納氏は母校の体育学部を49年に卒業された同窓生です。
氏は勤務校の教頭として災害当日に取り組んだ生徒達の避難誘導の様子、対策本部の設置から災害発生の伝達の方法、避難用具や避難食の備えと管理など、学校内に帰宅困難生徒と教職員が宿泊をした様子、生徒の保護者へ受け渡し方法などの実際例を報告されました。
また、教職員間のチームワークの良さが発揮されるなかで、その中核になったのが体育教員であったことを力説されました。その細部にわたる生徒たちへの行き届いた思いと配慮は、歳納氏の人柄と同時に教員としての経験が積み重なっていることを十分にうかがえさせるものでした。
パネリスト二人の事例発表を受けた意見交換の場では、避難防災の用具や食品の話題、私立校と公立校の対応や情報の違い、各参加者の経験談などが披露され、参加者にとっては、これから必ず起こりうる災害への取り組みと心得を学ぶことのできた意義のある2時間半であったと思います。
今回はじめて取り組んだ、同窓会(東京啓友会)主催による研究会テーマは今日的であり、パネリストの事例発表も示唆に富んだ傾聴に値する内容であったと、感想を参加者からいただきました。また、参加者が少人数であったことも幸いして、フロアーの全員が発言をする機会に恵まれ、研究会として大きな成果が上がったことはうれしい誤算となりました。
これからの時代の同窓会活動は、卒後において新しい情報や研究テーマを会員に提供することは極めて重要であると考え、今後も会員相互の意見が活発に交換できる場を設けていきたいと思います。
なお、今回のシンポジウムの議事録及び映像は整理・記録して、今後、本会のホームページなどで紹介していく予定です。
会場の様子
報告者:第1回研究会コーディネーター 木村博人(S58卒)